
重慶視察レポート

2010年7月21日
驻上海北九州市经济事务所
副所长 田村卓也

1.重慶市について
①人口 3,257万人(2009年戸籍ベース)
②面積 8.24万㎢(北海道とほぼ同じ)
③2009年域内総生産額6,528億元(全国23位)
④2009年一人当たり生産額22,916元(全国13位)
⑤2009年域内総生産額成長率14.9%(全国3位)
⑥平均年収 30,963元(2,580元/月)
⑦友好都市 広島市、水戸市、レスター(イギリス)、トロント(カナダ)、シアトル(アメリカ)、トゥールーズ(フランス)、インチョン(韓国)、ブリスベン(オーストラリア)他
⑧雑誌フォーチュンの世界500社のうち重慶に進出している企業数 154社(2009)
⑩歴史(近代)
1929年 重慶市成立(中華民国時代)
1937-46年 国民党政府の戦時首都
1949年 中華人民共和国成立、中央直轄市
1954年 四川省に編入
1983年 全国初の計画単列市(指定都市)に指定
1992年 長江沿岸開放都市に指定
1997年 中央直轄市に指定
2007年 成都市とともに全国都市農村調和的総合改革試験区として承認
⑪重慶に進出している主な日系企業
ホンダ、スズキ、ヤマハ、デンソー、アイシン、関西塗料、矢崎総業、TOTO、九州テイ・エス
⑫日系の進出銀行 三井住友銀行(成都から三菱東京UFJ銀行の来重慶あり)
⑬重慶市日本総領事館の管轄範囲 重慶市、四川省、雲南省、貴州省
⑭日本との定期航路便 名古屋便のみ
| 名古屋→重慶 | 重慶→名古屋 | ||||||
| 便名 | 出発 到着 | 運航曜日 (星期) | 备注 | 便名 | 出発 到着 | 運航曜日 (星期) | 备注 |
| CA406 | 14:55 19:50 | 月火水木金土日 | NH5747と共同運航 ※上海経由 | CA405 | 07:40 13:45 | 月火水木金土日 | NH5746と共同運航 ※上海経由 |
3.動き出した重慶大開発戦略
・ 重慶市は1997年に四川省から独立、北京、上海、天津と並ぶ内陸部唯一の中央直轄市として設立されました。直轄市設立の目的は、「4つの課題」(三峡ダム建設による百余万人の住民移転、貧困層の貧困脱却、国有企業改革、環境汚染の改善)の解決であったため、重慶市は人口密集の市中心部、中小町と広範な農村地方からなっています。総人口(戸籍ベース)3,257万人のうち、都市人口は907万人(総人口の28%)で農村人口は2,350万人(72%)となっており、「大都市」と「大農村」が並存したいびつなマンモス大都市となっています。
・ 直轄都市になってから10年あまり経って、設立当初に意図された目的はほぼ達成されたと評価することができます。その一方で、市内と農村の所得格差はいまだ解消されていないという問題を抱えています。胡錦濤政権は、西部大開発の牽引役、都市農村の「二重構造」解消の先行ケース、内陸型対外開放のモデル地域として重慶市の開発を加速させ、西部地域の開発目標達成の優先地域として重慶市を指定しました。これまで西部地区の開発の中心地は四川省の省都成都市であると目されていた中で、重慶市がモデル地域に選ばれたことには大きな意味があると思います。
・ 2009年1月26日に出された『国務院の重慶市都市農村統一総合改革と発展に関する意見』などによると、次の10年間にわたる重慶市開発の目標として、中期的には2012年までに一人当たりGDPや公共サービス能力を全国平均レベルに引き上げ、都市部住民と農村部住民の所得格差を3.15倍(97年の水準)に低下させることなどを掲げました。また、長期目標としては2020年に一人当たりGDPを全国平均以上にすること、都市住民と農村住民の所得格差を2.5倍までに縮小させること、都市化率(都市住民/農村住民)を現在の50%から70%までに引き上げることなどを掲げました。08年の常住人口2,839万人で計算すると、都市部常住人口は08年の1,420万人から20年の1,987万人になり、世界最大級の都市規模となる見込みです。農村住民、出稼ぎ労働者、都市住民の間の権利、公共サービス、生活条件を同等にするのが開発戦略の究極の目標とされています。
・ これら国家戦略を受けて重慶市では『5つの重慶』というスローガンを掲げました。宜居重慶(住みやすい重慶)森林重慶(森林・自然豊かな重慶)暢通重慶(渋滞のない重慶)平安重慶(治安のよい重慶)健康重慶(市民が健康な重慶)
・ 重慶市は今後も以下の3大プロジェクトを中心に発展していくことが予想されます。
1)三峡ダム地域の開発
100万人を超えた三峡ダム移民の生活基盤の整備、産業の振興、生態環境の整備のプロジェクトを実施。そのため中央政府から1,000億元(約1.4兆円)の投資資金が用意されているというそうです。
2)長江上流の総合物流交通センターの整備
1,000キロの鉄道建設、高速道路1,000キロの建設に着手、空港の拡張や万トン級船接岸可能な港湾の整備を開始。特に運営中・建設中を含む「1環9線」の10線路の513キロに及ぶ都市交通網の整備が計画されている。完成すれば、北京、上海に次ぐ大規模な都市交通網が出来上がります。
3)内陸型経済開放区と保税区の設立
内陸部初、上海洋山保税港区と同等の政策が適用される保税区の運営を開始。また、上海浦東新区、天津浜海新区と同等の政策がなされる「両江新区」(1,000平方キロ)が今年の6月に設立されました。

4.投資環境を充実させている重慶市
・ 重慶市開発の戦略的推進に当たって重慶市が求めた12個の優遇政策に加え、中央政府から別項の10個の政策を与えられています。
・ 目玉政策として、企業所得税の優遇が挙げられます。重慶市では税率15%(通常25%のところ△10%の優遇)が10年間適用され、更にIT関連については△5%の10%が企業所得税として適用されます。
・ この政策の適用に合わせる形で2009年8月米国Hewlett Packard社(HP)及び富士康(フォックスコンにより、「HP(重慶)ノート PC 輸出製造基地」、「富士康(重慶)産業基地」の二大 IT プロジェクトが重慶で正式に調印され、重慶市西永微電子産業園への進出が確定しました。両プロジェクトは2012年竣工予定で、年間のノート PC 計画生産能力は2,000万台、生産高2,000億元(約2兆8,000億円)に達する巨大プロジェクトです。これにより、重慶市の主要産業が自動車・バイクからIT商品へ切り替わるのではないかと言われています。
・ インフラ整備についても市内各地で道路建設やモノレールの延伸工事(一部は地下鉄となる)が行われており、またマンションは至るところで建設され、市内中心部は急速な都市化が進んでいます。

与科学技术委员会会谈的场面
◇◇「12+10」の特別支援政策◇◇
| 優遇政策 | 中央政府から与えられた別項の政策 |
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①特定産業を奨励するための企業所得税率優遇(15%) ②重慶市への中央交付金の拡大 ③三峡ダム地域への投資増額 ④都市農村を一体化させた社会保障システム整備への支援 ⑤柔軟な土地利用政策の許可 ⑥「重慶農村土地取引所」の設立 ⑦長江上流地域の金融ハブの指定 ⑧内陸型経済開放区の設立 ⑨保税区の設立 ⑩教育事業への支援強化 ⑪インフラ整備への特別支援 ⑫「退耕還林」(耕地を林地に戻す)プロジェクトの継続実施 *中国では2007年に耕地を確保するためこれまで実施してきた「退耕還林」を停止した |
①‘三峡ダム発電用の水資源税の導入 ②‘都市中心部の緑化用地への「只徴不転」(用地規制の不適用)政策 ③‘農村金融革新への支援強化 ④‘近代牧畜業モデル地域設立への支援 ⑤‘重慶の二輪車への「家電下郷」(農村への家電普及プロジェクト)政策の対象品目化 ⑥‘サービスアウトソーシングモデル都市の指定 ⑦‘産業投資ファンドの設立許可 ⑧‘低収入人口に対する長期の貧困対策 ⑨‘「生産型増値税から消費型増値税への移行」などの東北地方旧工業地域政策の適用 ⑩‘鉄道、高速道路、港湾施設、空港などのインフラ整備の前倒し |
5.日系企業の投資環境について
・ 上述のように国家戦略の一環として特別な優遇政策が施行されており、投資先として飽和状態の沿海部よりも魅力あるものになっています。そういった中、重慶市は日本からの出資、特に技術力のある半導体やIT関連企業の進出を強く熱望しています。これは中国全土に言えることなのですが、日本の高度技術には非常に着目しており、日本企業との協力事業展開を模索しています。しかし、日本の企業が実際に投資したその後に発生するであろういくつかの問題が挙げられます。
・ (派遣駐在員)重慶市には日本総領事館(日本人スタッフ10名)があり、いざという時は総領事へ駆け込むことができます。しかし、市内の日本人は約300名程度(重慶市総領事館ヒアリング)。現在進出している日系企業約200社のうち、日本人駐在員が1人もいない会社もあるそうです。また、市内には日本食の店が20店程度しかなく、日本人学校もありません。インターナショナルスクールは英国系があるのみであり、駐在員の住環境はお世辞にもよいとは言えない状況です。
・ (中国人スタッフ)日本語人材は不足していると言わざるを得ません。市内に外国語大学はありますが、外事弁公室の通訳となっていた外国語大学の日本語教師もレベルは高くなく(時折誤った通訳を行っていた)、日本語が話せる人材は北京、大連、上海などに比べると極めて少ないと予想されます。また、直轄市とは言え、田舎的な要素も強くあり、民度の低さ(モラルやマナー)もあることは確実であり、社員教育は相当必要であると思料されます。
6.視察を終えて
・ 重慶市は国家戦略上の重要な位置付けにあることもあり、外事弁公室・科学技術委員会・国貿促の方々は共通して自信に満ち溢れ、克つ開放的であると感じました。
・ 北九州市には昨年までAIMに同市の事務所がありましたが、同市の都合により福岡市内に移転しました。しかし、同市は依然北九州市とは環境面や経済面での協力を切望しており、科学技術委員会との会談においては、過去にモノレールの建設時の技術協力やKAITAとの国際協力事業の取組実績があることから、他県・他市を差し置いて環境面での質問が小職に寄せられ、環境先進都市として北九州市の施策をアピールしました。今後、同市としては下水処理の分野で情報交換を希望している様子でした。
・ 観光面においては、年間同市を訪れる日本人観光客は10千人に満たない状況で観光地としての認知度はまだまだの感はありますが、鈴木自動車製のタクシーが走る等、日本人にとって親しみやすさもあり、大足の石刻(世界遺産)や三峡下り等有名な観光スポット・観光コースもあります。温泉施設も豊富にあるようです。
・ 2004年サッカーの国際大会(アジアカップ)で日本人選手へ寄せられた大ブーイングが大きく報道され、日本人にとって重慶市は近寄りがたい、縁遠い都市というイメージがあったのですが、実際に訪れて感じたのは、「そこまで日本人を意識していない」、ということでした。上述のように日本語は地元の人間にとって馴染みの薄い言語のようであり、なかには日本語は中国国内の方言と間違う人物がいるほどでした。その為、日系企業にとって、重慶市は中国国内で数少ない先行者利益が期待できる都市と言えるのではないでしょうか。

与重庆市总领事会餐
(从右数第6位为濑野总领事)






